■□4月の法話■□
●私たちはこの世にふらっとやってきた客
私たちは、不満を言い出したらきりがありません。
たとえば、「物価が高い」「○○が買えない」「○○が優しくしてくれない」「○○は私のことを考えてくれない」などです。お金のことや人間関係のことについて不満を言い出したら、どんどん出てくるに違いないでしょう。
こういった「不満」を抱えながら毎日を過ごしている方は、多いのではないでしょうか。
今の自分が置かれている状況に納得できず、常に物足りなさを感じながら生きている。だから不満を口にしてしまうようです。
しかし、私たちは不満を言えば言うほど、自分自身が不幸な気持ちになっていきます。なぜなら、その感情が増していき、イライラや怒りをコントロールできなくなるからです。
そういう意味では、不満というものは、あまり口に出さないほうがいいようです。
では、どうすればいいのでしょうか。
戦国から江戸初期の時代を生きた禅僧・沢庵が残した言葉にヒントがあります。
「此の世の人、来たとおもへは、苦労もなし」
というものです。
私たちはお客さんとして、この世に招かれて生きています。しかし、私たちは何かにつけ、よく文句を口にします。たとえば、奥さんに向かって、「料理がまずい」と文句を言ったりします。。沢庵は、「そういうときには、自分はお客さんとしてこの世に招かれている、という気持ちになってみればいい」と教えているのです。
奥さんの料理がまずくても、後の関係を考えると、たとえ出された食事がおいしくなくても、文句など言いませんよね。逆に「おいしいですね」と相手を褒めて、ポイントを稼いだりします。
また、暑い日に会社でエアコンが故障したとき、「こんなひどい職場環境では仕事になりません」と文句を言いたくなることも同じです。
これがよその取引先の会社であったなら、たとえエアコンが効いていなくても、文句など言わないでしょう。
何事につけても、そのように「お客さんとなって招かれているのだ」と思えば、私たちの心に不満など生じないはずです。誰かに文句を言うこともなくなります。そうすれば、心乱されることなく、穏やかな気持ちで生きていけるということです。
私たちはあの世からこの世にふらっとやってきた客です。だから、この世は「仮の宿」。いずれ時が来れば、あの世に帰っていくのだから、どんなことがあっても文句を言わずに生きていくことが大切なのです。
沢庵和尚の教えには、そういう意味があります。
確かに文句を言いたい場面はあります。それでも私たちが誰かに文句を言いたくなったら、「来たと思えば苦労なし」という言葉を思い出してみてはどうでしょうか。
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